TCCC(Tactical Combat Casualty Care)
戦術的第一線救護
米国外科学会、および米国救護員協会の「戦術環境下における負傷者管理」部門という2つの権威から推奨された唯一の負傷者ケアのスタンダード。
TCCC(戦術的第一線救護)の発展
戦場のヘルスケアについて、何世紀にもわたって得られた厳しい教訓は、1996年に軍事医学に関する画期的な論文が発表されるまで軽視されてきました。かつての軍隊における負傷者ケアのガイドラインは、非戦闘地域で用いられる戦術がそのまま基準とされていました。アメリカ特殊作戦軍のいくつかの集団で始められた新しい負傷者ケアの戦略は、1996年にその全容が公表されました。それは“Tactical Combat Casualty Care (TCCC 戦術的第一線救護)”と呼ばれました。
教訓
- 戦闘による死者の90%は、治療施設に到着する前の戦場で亡くなっている。
- 大動脈の損傷によって起こる大量出血は、通常は非常に性急で、おびただしいため、負傷者は助けが来る前に亡くなってしまう。
ターゲット:それは“防ぎ得た”戦闘での死
グレイ大佐は85年前に要点をついていた。第二次世界大戦から今日までのデータを使用する実証的研究が、同じ結論を引き出している。“防ぎ得た”戦闘での死、その圧倒的な原因は、ずっと変わらず大量出血である(下図参照)。しかしながら、最近まで、兵士も士官もそれに対するトレーニングを受けていなかった。またあるいは生命にかかわる出血を制御する装備を、彼らのオペレーションの活動領域において所持していなかった。
戦場での「防ぎ得た死」を減らすこと
TCCCは、一つの包括的な目標もって、今までの負傷者ケアの手法を、すべてにわたって再評価することに着手しました。それは「負傷によって戦場での『防ぎ得た死』を減らすこと」です。
この新しい戦略は、過去の戦場における負傷のパターンをもとにしています。また戦術的な法務執行機関(警察など:彼らは軍事的なカウンターパートナーとも運用上の多くを共有します)の事例も特別な関連を持って検証されています。過去の民間医療に基づいたアプローチにかわり、戦闘での現実に特有の「統合された戦略」が、今も明確になり続けています。標準的な治療施設到着前の処置(それらは基本的に鈍的外傷に基づいています)と比較して、TCCCは、撤退時間の延長によってはさらにひどくなる戦術上固有の鋭的外傷の変化に、まず注目することを基準とする点で明確に区別されます。
今日、TCCCは、米国の国防総省内の、戦術的な戦場での負傷者管理の分野で、急速にスタンダードになりつつあります。そしてTCCCは、米国外科学会、および米国救護員協会の「戦術環境下における負傷者管理」部門という2つの権威から推奨された唯一の負傷者ケアのスタンダードなのです。
TCCCは負傷者ケアの3つの明確なフェーズが展開するようにして構築されています。
戦闘下でのケア(Care Under Fire)
衛生兵と負傷者の両方が敵対火の下にいる間、ケアは受傷した現場で施されます。利用可能な衛生資材は各隊員および衛生兵が携行しているものだけに制限されています。
戦術的フィールドケア(Tactical Field Care)
一旦、負傷者が「もはや敵対火の下にいない」と判断されたときに施されるケアです。衛生資材は、まだミッションに加わる隊員によってフィールドへ運ばれたものに制限されています。搬送までの時間は数分から長時間まで変動するかもしれないのです。
戦術的な撤退救護(TACEVAC)
負傷者が、よりハイクラスの救護梯団に搬送させるときに施されるケアです。このフェーズの間は、より多くの隊員の協力や、より多くの衛生資材など、これらの有効な資源も利用可能になります。
防ぎ得た戦闘での死
- 大動脈の損傷によって起こる大量出血は、通常は非常に性急で、おびただしいため、負傷者は助けが来る前に亡くなってしまう。
教訓
- 負傷者の運命は、最初に包帯を巻く人々にかかっている。
– Col. Nicholas Senn, 1844-1908
“Combat Casualty Response Equipment™”システム
階層をなした衛生資材のシステム
すべてのケアのフェーズにおいて、TCCCの根源的な任務は、「適切な時に、正しい処置」という重要な任務を遂行をすることです。特に、戦術環境では、間違った時に投与されたよい薬が、負傷者を死に至らしめることがしばしば証明されています。個々の兵士/士官と同様に戦術上の医療従事者も、彼らと共に恐らくあるレベルにおける負傷者ケアにかかわることでしょう。前述のことを踏まえると、各レベルのケアに対応するトレーニングと適切な衛生資材の配備が必要となります。以下に図示するように、TCCCのマクロ的な戦略では、負傷者ケアの各過程で外傷を管理することにとって不可欠な、重要な装備を各階層的フェーズに対応して装備します。戦術的第一線救護(TCCC)の訓練基準で遂行された場合、この階層的なアプローチは90+%程度の“防ぎ得た”戦闘での死を減少させることができるでしょう。
我々の目標は、戦術上の医療従事者と同様に個々の兵士/士官に、「防ぎ得た戦闘での死」を著しく減少させるために適切なツールを用いる能力を与えることである。